「ムスリム同胞団幹部らに逮捕状」に見るニュースの違い

NHKのニュース
全文は引用にならないので、前文と見出しを列挙します。

エジプト 軍などと衝突 １７人死亡　NHKニュース　2013年07月6日
軍による事実上のクーデターが起きたエジプトでは、
大統領職を解任されたモルシ氏の支持者らが
大規模な抗議集会を開くなど反発を強めており、
一部で軍と衝突して、これまでに３人が死亡しました。
（中略）
ムスリム同胞団トップのバディヤ団長が
「モルシ氏が大統領職に戻るまで抗議行動を続ける」と述べ、
あくまでも平和的に抗議を続ける構えを示しました。

そのあとの内容は、
「モルシ派の抗議行動」
「モルシ氏追い詰められた経緯」と続きます。

ニュースの内容にエジプト軍側からのニュースは一切含まれていませんでした。

同胞団幹部ら拘束命令 米が強い懸念　NHKニュース　2013年07月11日
エジプトの検察が、モルシ氏の支持母体である
ムスリム同胞団の幹部らを拘束するよう命じたことについて、
アメリカ政府は強い懸念を示し、
すべての勢力が政治プロセスに参加する必要があると指摘しました。

アメリカ・ホワイトハウスのカーニー報道官は１０日、記者会見で、
「われわれは一方的な拘束に反対するということを明確にしておきたい」
と述べ、強い懸念を示しました。

というニュース。
ここにもエジプト軍がなぜそうしたのかについて触れられていませんでした。

なぜ、ここまで偏った内容を流すのでしょうか。
その前に、AFPのニュース内容を見てみると…

同胞団最高指導者らに逮捕状、エジプト 前大統領は｢安全｣ AFPBB News　2013年7月11日
エジプト検察当局は10日、
ムハンマド・モルシ前大統領の出身母体であるイスラム主義組織
「ムスリム同胞団」の最高指導者、
ムハンマド・バディア氏と複数の幹部らに対し、
首都カイロで50人以上が死亡した8日の衝突を扇動した容疑で
逮捕状を出した。司法筋が明らかにした。

この8日の衝突につき、
同胞団側は、軍と警察が早朝の祈りをささげていた
同胞団メンバーらを「虐殺した」と主張し、
死者の中には女性や子供も含まれていると訴えている。

そして、軍は
「武装したテロリストら」から攻撃を受けたため反撃したと
反論している。
また、保健省は死者に女性や子供が含まれていたという
同胞団の主張を否定している。

こういう報道であれば、両者の言い分がわかりますね。
いったいどこに真実があるかはわかりませんが、
少なくとも、公平で公正な報道姿勢と言えそうです。


私は、どちらが正しいとかわかっているわけじゃないですが、
一番最初の反政府デモのときに調べ、NAVERまとめを作りました。
エジプトでデモが起こっていた背景　アラブの春から2013年デモまで　原因まとめ

ことの発端は、ムバラク政権時代の経済自由化による
貧富の差の拡大と物価高で庶民の生活が困窮したことに始まります。

それがアラブの春につながり、
大規模デモになってムバラク政権が崩壊しました。

このとき、庶民が一番待っていたのは、
生活の困窮からの脱出であることは間違いなかったでしょう。
しかし、モルシ政権は自らの権限強化に走り、経済はさらに悪化。

それ自体が今回の反政府デモの大きな原因でした。

エジプトの人々はイスラムに反対するとかそういう事情ではなく、
生活を守るために立ち上がった。
報道によると1400万人が参加したとも言われる反政府デモ。
国民の6人に1人が参加した計算に。

そこで、平和裏に解決させようとエジプト軍がロードマップを作り…。
という流れで、いわばアラブの春の時と同じ状況となるんですが、
なぜか、今回は軍が悪者として報道されるようになります。

しかも、それまで反政府デモの原因について
あまり触れてなかったマスコミが、一気に軍のクーデターと報じて。


そういう状況で世界的に報道がなされる背景には、
どの国も同じ危険性をはらんでいるというのが原因だと思いますが、
こういう報道の在り方に危惧を覚えます。

誰しも、両方の言い分を少なくとも知りたいですよね。
片方ばかりの報道には注意したほうがいい気がします。

もちろん、長いものに巻かれろ　と言いますし、
そんなことに首を突っ込まないほうがいいとも思いますが、
そういう報道姿勢を仕方ないとすれば、
同じことが日本で起こった時も、同じ目に遭うということになります。

今の世の中、金による平等という表現がよくされます。
一人一人の平等ではなく、資本的平等です。
そういう価値観がお金を持っている側の肩をもつ
強いものの側の肩を持つ
報道につながるのは容易に想像できますね。

エジプトの混迷は、エジプト国内だけの問題ではなく、
世界の報道の在り方をも映し出しているように思います。

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