2014年05月24日

「原発の危険に関する教科書」福井地裁大飯原発運転差し止め判決要旨全文まとめ


view from Kiyomizu-dera / Paul and Jill


判決文の構成
主文
理由
1.はじめに
2.福島原発事故について
3.本件原発(大飯原発)に求められるべき安全性
 (1)原子力発電所に求められるべき安全性
 (2)原子炉規制法に基づく審査との関係
4.原子力発電所の特性
5.冷却機能の維持について
 (1)1260ガルを超える地震について
 (2)700ガルを超えるが1260ガルに至らない地震について
 (3)700ガルに至らない地震について
 (4)小括
6.閉じ込めるという構造について(使用済み核燃料の危険性)
 (1)使用済み核燃料の現在の保管状況
 (2)使用済み核燃料の危険性
 (3)被告(関電)の主張について
 (4)小括
7.本件原発(大飯原発)の現在の安全性
8.原告らのその余の主張について
9.被告のその余の主張について
10.結論


まとめ
以下は、これまでに書いた内容の私の解釈部分のみを集めたものです。
あくまで私の解釈なので、きちっと全文を読まれることをお勧めします。
【速報】大飯原発運転差止請求事件判決要旨全文を掲載します - NPJ

主文
被告は、大飯原発から250キロメートル圏内に居住する原告に対して、
大飯発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない。

ちなみに250q圏内とは、近畿地方はまるまるすべて入り、
東は長野県、静岡県・新潟県・山梨県の一部を含み、
すっぽり収まる(ほぼ収まる含む)県は
富山県、石川県、岐阜県、愛知県、
徳島県、香川県、鳥取県、岡山県、
西では島根県・広島県・高知県の一部を含む地域のようです。
大飯原発運転差し止め「250キロ圏の人格権侵害」指摘 毎日新聞 2014年05月21日
※上記ニュースに地図で示した半径250q圏内の地図あり
福井地裁による大飯原発運転差止請求の判決要旨全文はまるで「原発の危険に関する教科書」(1)


理由 1はじめに
・「生命を守り生活を維持」という人としての当たり前の権利から判断
・人格権は個人由来だが、多数の人々の場合、なおさら強い要請となる

理由 2福島原発事故について
・福島第一原発事故で15万人もの住民が避難生活
・さらに避難で少なくとも入院患者等60名が死亡
・チェルノブイリで広範囲の避難を今も取らざるを得ない事実は、
 放射性物質のもたらす健康被害について楽観的な見方をした上で
 避難区域は最小限のもので足りるとする見解の正当性に
 重大な疑問を投げかける
…福島第一原発事故を非常に苛酷な事故としたうえで、
 チェルノブイリ原発事故におけるその後の対応と日本の差を指摘

この放射性物質による健康被害についての楽観的な見方は
国(政府)をはじめ、官僚、経済界、学者、マスコミにまで至っている
気がしますね。そこにも疑問を投げかけている判決だと私は思います。

また、この福島事故を取り上げているのは、
その後に続く、裁判上の判断の大きな拠り所となるためです。
福井地裁による大飯原発運転差止請求の判決要旨全文はまるで「原発の危険に関する教科書」(2)


理由 3本件原発に求められるべき安全性
前段では、
・原発は電気の生産という社会的には重要な機能を有するが、
・電気を生み出すための一手段たる
 経済活動の自由(憲法22条1項)に属するものであって、
・憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきもの
・さらに原発で人格権が広汎に奪われる可能性

つまり、電気の生産は社会的に重要でも、
多くの発電(水力や火力、風力、地熱、太陽光…)のうちの
原発は一つの手段でしかなく、
それは経済活動の自由という憲法上の権利に属するものであっても、
それが人格権を侵害してもいいほどの理由には当たらないため、
人格権よりも劣位に置かれる、ということなんだと思います。

電気は重要でも、原発が重要ということにはならないとしたんですね。
※電源喪失で病院で人命が失われる可能性もありますしね。
 電気はいらないという話にはもちろんなりませんね。

さらに大きな自然災害や戦争と並んで、
原発は人格権が広汎に奪われる可能性をはらんでいるとしています。
大きな自然災害や戦争と同列なくらい危険な存在とされたようです。


後段では、裁判の拠り所についてです。
・新しい技術による潜在的危険性を許さないとすると社会発展はなくなる。
・その潜在的危険性が明確じゃない場合は、判断が難しい。

でも、今回は福島第一原発事故という判断材料があるため
・その新しい技術による被害の大きさが判明している場合は
 その安全性が保持されているの判断をすればいいだけ
・福島原発事故を通じて(危険性が)十分に明らかになったといえる。
としています。
また、最後の部分が特に重要で、
・判断基準が福島第一原発事故で明確となっているにもかかわらず、
 この判断を避けることは、
 裁判所に課されたもっとも重要な責務を放棄するに等しい

…と断じています。

つまり、大阪地裁や大阪高裁の「却下」という判決に対する
辛辣なメッセージとも受け取れる内容に思いますね。

さらに、人格権という最高の権利についての話なので、
・(人格権は)原子炉規制法をはじめとする
 行政法規の在り方、内容によって左右されない
・新規制基準への適合性の審査の適否という観点からではなく、
 福島第一原発事故を判断材料とする当裁判所の判断が及ぼされるべき
…ということのようです。
福井地裁による大飯原発運転差止請求の判決要旨全文はまるで「原発の危険に関する教科書」(3)


理由 4原子力発電所の特性
原発そもそもの危険性ということになると思いますが、
前段部分は、
・膨大なエネルギーのため、運転停止後も電気と水で冷却し続けないといけない
・そのため何時間か電源を失われただけで重大事故に
万一の場合、他の発電が運転停止という単純な操作で済むのと大違い

後段部分は、
・止める、冷やす、閉じ込めるが出来ないと放射性物質が漏れ出す
・福島原発事故は止めたが、冷やせなかったために漏れた。
本件原発(大飯原発)は冷やすという機能と閉じ込める構造に欠陥がある
…としています。


理由 5冷却機能の維持について
「大飯原発には1260ガルを超える地震は来ない」
関西電力の自認:
・1260ガルを超える地震によってこのシステムは崩壊し、
 非常用設備ないし予備的手段による補完もほぼ不可能となり、
 メルトダウンに結びつく。
 この規模の地震が起きた場合には打つべき有効な手段がほとんどない
…だそうです。

まずは、この1260ガルというのがひとつの判断になるようです。
では、この1260ガルという地震はないものなんでしょうか?

その前に地震に関する科学的知見については次のように判断されたようです。
・我が国の地震学会においてこのような規模の地震の発生を
 一度も予知できていないことは公知の事実
・地震は地下深くで起こる現象であるから、
 その発生の機序の分析は仮説や推測に依拠せざるを得ない
・(過去の地震)発生頻度は必ずしも高いものではない上に、
 正確な記録は近時のものに限られる

∴大飯原発には1260ガルを超える地震は来ないとの
 確実な科学的根拠に基づく想定は本来的に不可能

しかも、
既往最大の震度は岩手宮城内陸地震における4022ガル
※2008年6月14日の岩手県内陸南部震源の深さ8q M7.2の地震
 4022gal(全方向合成)、日本国内観測史上最大値
 (参照)岩手・宮城内陸地震 - Wikipedia

1260ガルという数値はこれをはるかに下回る
・岩手宮城内陸地震は大飯でも発生する可能性があるとされる内陸地殻内地震
・この地震が起きた東北地方と
 大飯原発の位置する北陸地方ないし隣接する近畿地方とでは
 地震の発生頻度において有意的な違いは認められない
・若狭地方の既知の活断層に限っても陸海を問わず多数存在
・しかも4022ガルは近時の我が国において最大というものにすぎない

・1260ガルを超える地震は大飯原発に到来する危険がある。


一言でいって、バッサリです。
福島第一原発事故以降、私もですが反原発になった方々の
漫然とした不安感を晴らしてくれるますよね。

ほんの少しのわかった近年の出来事(2008年の地震)ですら、
4022ガルなのに、1260ガルまでしか耐えられない時点でアウトということです。
東北と関西とでは地震頻度も差はなく、
原発周辺には(未知の活断層だけでなく)既知の活断層でさえも多数存在。

これまでの地震に関する科学的知見とは…。
誰しも東日本大震災のときに思った大いなる不安感。
「何もわからないんじゃないか?」という部分も、一刀両断ですしね。
・一度も予知できない、地下なので推測にすぎない、正確な長い記録もない
福井地裁による大飯原発運転差止請求の判決要旨全文はまるで「原発の危険に関する教科書」(4)


理由 5冷却機能の維持について(続き)
※イベントツリーとは、
 発端となる初期の事象からスタートして、
 これが最終的な事象に発展していく過程を、
 枝分かれ式 (ツリー状) に展開して解析すること。
 イベントツリー解析 消防科学総合センター

700ガルを超えるが1260ガルに至らない地震についてです。

イベントツリーに従った措置に対する実効性上の問題点(アとイとウ)
として、
・地震はその性質上従業員が少なくなる夜間も昼間と同じ確率で起こる。
・福島原発事故の原因について国会事故調査委員会は
 地震がいかなる箇所にどのような損傷をもたらし
 それがいかなる事象をもたらしたかの確定には至っていない。
 (その事故現場に立ち入ることさえできない
・原子力発電所における事故の進行中に
 いかなる箇所にどのような損傷が起きており
 それがいかなる事象をもたらしているのかを把握することは困難
 (その事故現場に立ち入ることさえできない
・限られた時間
 全交流電源喪失から炉心損傷開始まで5時間余り
 炉心損傷の開始からメルトダウンまで2時間もない
・対策の中にはテストすらできないものがある
 (普段では、非常用発電装置だけで
 実際に原子炉を冷却できるかのテストは危険すぎて出来ない)
・防御手段に係るシステム自体が地震によって破損されることも予想できる。
・実際に放射性物質が一部でも漏れればその場所には近寄ることさえできなくなる。
・大飯原発に通ずる道路は限られており施設外部からの支援も期待できない。
…だそうです。

原発本来の危険性により、
いったん事故が起これば、時間との闘いであるにもかかわらず、
事故現場に立ち入ることもできないため、
放射性物質が漏れれば近寄ることさえできない。
有効と思われる手段だとしても、普段にテストすることもできない。
ということだと思います。


関電の主張(エとオ)
・700ガルを超える地震が到来することはまず考えられないと主張する。

・全国で20箇所にも満たない原発のうち
 4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が
 平成17年以後10年足らずの間に到来しているという事実
福井地裁による大飯原発運転差止請求の判決要旨全文はまるで「原発の危険に関する教科書」(5)


理由 5冷却機能の維持について(さらに続き)
700ガルを下回る地震でさえも危険ということです。
・電気と水のいずれかが一定時間断たれれば大事故になるのは必至
・イベントツリーも用意されてはいるが、
 各手順のいずれか一つに失敗しただけでも、加速度的に深刻な事態に進展し、
 未経験の手作業による手順が増えていき、不確実性も増していく。

関電は主給水ポンプは安全上重要な設備ではないから
 基準地震動に対する耐震安全性の確認は行われていないと主張

・主給水ポンプの役割は主給水の供給にあり、
 主給水によって冷却機能を維持するのが原子炉の本来の姿
・このような設備(主給水ポンプ)を
 安全上重要な設備ではないとするのは理解に苦しむ主張である
 といわざるを得ない。


この根本的な問題「電気と水のいずれかが一定時間断たれれば大事故」と、
「時間との闘い」「未経験の手作業による手順」等々を勘案すると、
関電のイベントツリーは不十分ということのようです。

さらに、本質的な主給水ポンプですら、
安全上重要な設備ではないとする関電に対して、理解に苦しむとしています。


「原発という本質的危険性があるものを
 地震大国日本において1260ガル以上の地震が大飯原発には到来しない
 とするのはあまりに楽観的」ということのようです。

まさに、福島第一原発事故後、
反原発の方々が胸に抱いた不安の代弁のようですね。
それも地震の科学的知見も一刀両断、
原発の本質的危険についても徹底的に述べられた内容になっています。
福井地裁による大飯原発運転差止請求の判決要旨全文はまるで「原発の危険に関する教科書」(6)


理由 6閉じ込めるという構造について(使用済み核燃料の危険性)
(1)使用済み核燃料の現在の保管状況
・原子炉格納容器の外の建屋内の使用済み核燃料プールに置かれている
・その本数は1000本を超える
原子炉格納容器のような堅固な設備は存在しない。

(2)使用済み核燃料の危険性
・福島原発事故においては、
 4号機の使用済み核燃料プールに納められた使用済み核燃料が危機的状況に。

・この危険性ゆえに避難計画が検討された
 (原子力委員会委員長が想定した被害想定のうち、
 最も重大な被害を及ぼすと想定されたのは
 使用済み核燃料プールからの放射能汚染)
・強制移転を求めるべき地域が170キロメートル以遠にも生じる可能性
・住民が移転を希望する場合に
 これを認めるべき地域が東京都のほぼ全域や横浜市の一部を含む
 250キロメートル以遠にも発生する可能性があった
・これらの範囲は自然に任せておくならば、数十年は続くとされた。

…だそうです。
4号機の使用済み核燃料プールが傾いているので危険とはずっと言われていましたが、
東京都のほぼ全域や横浜市の一部ですら
移転を希望する場合に移転させる可能性があったんですね。


関電の主張は「堅固な施設で囲い込む必要はない」

・堅固な施設に囲まれていなかったにもかかわらず
 4号機の使用済み核燃料プールが建屋内の水素爆発に耐えて
 破断等による冷却水喪失に至らなかったこと、
 あるいは瓦礫がなだれ込むなどによって
 使用済み核燃料が大きな損傷を被ることがなかったことは
 誠に幸運と言うしかない。
・全交流電源喪失から3日を経ずして危機的状態に陥いる。
 そのようなものが、堅固な設備によって
 閉じ込められていないままいわばむき出しに近い状態
使用済み燃料は日々増える一方で堅固な設備作りは膨大な費用が掛かる
 「深刻な事故はめったに起きないだろう」という見通しのもとに
 このような対応が成り立っているといわざるを得ない。

徐々に読んでいるだけで、反原発だった私もぞっとしてきます。。

こんなにまで、楽観的な対応を国や電力会社、大学教授、
そしてマスコミまでもが流してきたのかと思うと…。
福井地裁による大飯原発運転差止請求の判決要旨全文はまるで「原発の危険に関する教科書」(7)


理由 7本件原発の現在の安全性
関電の考え方に基づく技術や設備は、
「確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ち得る脆弱なもの」


理由 8原告らのその余の主張について
高レベル核廃棄物処分につき、
・幾世代にもわたる後の人々に対する
 我々世代の責任という道義的にはこれ以上ない重い問題について、
 現在の国民の法的権利に基づく差止訴訟を担当する裁判所に、
 この問題を判断する資格が与えられているかについては疑問があるが、
 原発の本質的危険性からわざわざの判断の必要もない


理由 9被告のその余の主張について
さらにすごいのが国富の考え方。我が意を得たりそのものですが、
・極めて多数の人の生存権と電気代の高低を並列して論じれない
貿易赤字に伴う国富流出を関電は主張するが、
 豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、
 これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると
 当裁判所は考えている。

この裁判長いわく、
「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富」
だそうです。至極まともで当たり前のことですが、
今の国(政府)、官僚、経済界、学者、マスコミはどう思うんでしょうか。

二酸化炭素削減についても一刀両断です。
・福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、
 環境汚染であることに照らすと、
 環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違い


理由 10結論
本件原発の運転によって
直接的にその人格権が侵害される具体的な危険があると認められる
福井地裁による大飯原発運転差止請求の判決要旨全文はまるで「原発の危険に関する教科書」(8)


うまくまとめられたかどうかといえば、
難しい上に長いので、結局、箇条書きというか羅列で終わってしまいましたが、
もう少し、頭の中で噛み砕いて、また記事にするかもしれません。
(しないかもしれませんが…。)

福井地裁による大飯原発運転差止請求の判決要旨全文はまるで「原発の危険に関する教科書」(8)
にも書きましたが、
今の時代では、このようなまともな主張をすることが恐ろしい時代。
裁判長始め、この判決文に携わった裁判官の方々に敬意を表するとともに、
不当な出来事がないことを願うばかりです。



Tomorrow will surely come. / skyseeker


余談:
<大飯原発>運転差し止めを命じた福井地裁の判決要旨・他いろいろ - みんな楽しくHappy♡がいい♪さんに、
福井新聞によるちゃんとまとまった要旨と、
原子力規制委員会田中俊一委員長、入倉幸次郎日本地震学会元会長、
福井県おおい町中塚寛町長、菅義偉(すがよしひで)官房長官などの
5月21日 22時01分のNHKニュースの内容が載っていました。

さらに、すべての判決全文も。
関西電力大飯原発3,4号機運転差し止め訴訟 福井地裁判決謄本_前半部 pdf
関西電力大飯原発3,4号機運転差し止め訴訟 福井地裁判決謄本_後半部 pdf
by 原子力資料情報室

そのページ数は117ページに及んでいました。
※さすがに私は読む気になれませんでした。
F6破砕帯の調査や原発の仕組み、ストレステストなどから始まっていました。
※もちろん
 【速報】大飯原発運転差止請求事件判決要旨全文を掲載します - NPJ
 には載っていません。

上の要旨ですら、私は読むだけで30分、理解して記事に起こすのに半日かかりました。

ひとつ気になったのが、21日夜のNHKニュースで述べられた人々。
私より文章を読むのも理解するのも早いでしょうけど、
判決全文をちゃんと読まれたんでしょうか?
時間的な点からもちょっと気になりました。。

さらに追記:
お友達さんですかね、こんなツイートがありました。



…この方は、裁判官を永年勤め、その後、某大学で教鞭をとられ、
 現在は某弁護士法人の代表だそうです。
タグ:原発
posted by ポジタリアン イエロー at 16:42| ブログ
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